【レポ】250517 「ホストクラブとスカウト問題(講師:キャロライン・ノーマ)」学習会
- 買春社会を考える会
- 5月26日
- 読了時間: 4分
更新日:9月27日

皆様
買春社会を考える会の公式サイトをご覧くださり、ありがとうございます。いつも大変お世話になっております。
去る2025年5月17日に行われた学習会の内容を簡単にレポートいたしますとともに、使用されたレジュメと原稿を記事末に添付いたします。ぜひ、ご参考になさってください。
さて、5月20日に国会で風営法の改正が可決され、ニュースでも大きく取り上げられております。
悪質ホストクラブの卑劣な手口に一手…改正風営法が成立
改正風営法では、客との恋愛感情に付け込むいわゆる「色恋営業」や、ツケ払い(いわゆる「売掛金」)の支払いのために性売買やAV出演の強要を禁止する内容で、公布から1ヶ月後に施行の予定。悪質な営業に歯止めをかけるための改正となっております。
今回の学習会はまさに時流に沿った、ホットでタイムリーなテーマを共有できました。そのせいかオンライン聴講も20名以上。また、現地でのご参加も多く盛況を迎え、この問題に対する社会的関心の高さをうかがえることになりました。
講師のキャロライン・ノーマ先生はこのテーマに関する論文を書き上げたばかりという事です。多くの日本人が知らない事実や統計情報をまとめ、非常に踏み込んだ内容でした。特に、ホストクラブという業態がその成立当初からそもそも「夜職の女性からの搾取を目的にした商売」であったこと。「裕福な年配女性を若い男性に接待させる」という誤ったイメージゆえに、欧米のリベラル派から(多分にオリエンタリズム的視点で)無責任に称賛されているというのは、当記事執筆者にも初耳でした。
88年というバブル絶頂の時代には、売掛金をめぐって15人の未成年少女が新潟の温泉地に人身売買されるという事件が起きています。1人あたり20万から50万という価格の安さも衝撃的です。
現在は性売買の行き先はいわゆる「海外出稼ぎ」がメインになり、より危険度が増しているほか、ホストやスカウトが受け取る収益も増大している点。SNSやマッチングアプリが来店の入り口となり、より心理的ハードルが低くなった点など、問題が悪質かつ複雑になっていると感じました。
各団体のロビイングの成果で「売掛金」や「色恋営業」の禁止など、現在の業界は逆風傾向にあるものの、まだまだ問題の根絶にはほど遠い状態です。今回の刑法改正についても、罰則規定が存在しない事から実質的な効力は疑問視されています。
「トクリュウ」(匿名流動型犯罪グループ)といった反社会的勢力との結びつきはもちろん、よりハードルが低くゲートウェイドラッグ的な存在である「コンセプトカフェ」や、被害者女性たちの「商品価値」を高めるための美容整形業界も一体となり、さながら「女性搾取界のコングロマリット」がワニのように口をあけて若い女性を待ち受けています。
引き続き、粘り強く警鐘を鳴らし、問題提起をしていく必要性を強く感じました。
最後の質疑応答の時間では、ホストクラブの洗脳から脱した性売買サバイバー当事者の生の証言はないのか、またサバイバー同士で連帯しているケースはないのか、といったご質問が印象的でした。実際は社会的スティグマや誹謗中傷のリスクを考えるとなかなか声をあげられない、心的外傷の深さから人間関係を築くのも難しい女性が多いだろうことから、矢面に立ってオピニオンを発してくれる当事者女性は出づらいだろうと推察されました。
日本で一番有名な、ホストクラブの被洗脳サバイバー当事者は「頂き女子りりちゃん」(渡辺真衣被告)と思われます。しかし、彼女に対するマスメディアの興味本位な消費の仕方や、激烈な誹謗中傷の多さからも、世間の目の恐ろしさが充分うかがえます。
被害者が被害者として声をあげることのむずかしさが、あらゆる性暴力・性搾取被害に共通する大きな特徴でしょう。これは「自由恋愛」でも「自由選択」でもなく、「搾取と差別の結果」であることをしっかりと主張し、知らしめていくことが必要です。
次回の学習会は日程やテーマなど、まだ未定ではございますが、是非またよろしくお願いいたします。今回は皆様、本当にありがとうございました。
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文責・T



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